- Blog記事一覧 -「ひざに水がたまったときの対処法」
“ひざに水がたまる” という状態を、私も2度ほど経験したことがあります。その時は、ひざは曲がらないわ、痛みがきついわで、どうやって歩いていいのか・どうやって階段を下りていいのかもわからなくなって途方にくれました。実体験しただけに、ホントにいやな症状です。
仕事やスポーツによるケガ、加齢によるひざの骨の変形などから、正式には「関節水腫(かんせつすいしゅ)」とよばれる“ひざに水がたまる”ことが引き起こされます。この“ひざに水がたまる”状態になったときに、
「ひざの水抜いたら癖になるっていうけど、大丈夫なの?」
という質問をよくいただきます。ひざの痛みは取りたい⇒でも注射で水を抜くのは怖い⇒我慢して水を抜いても癖になるならやらないほうがいいのかな?と迷ってしまいますよね。
そこで今回は、「関節水腫(かんせつすいしゅ)」とよばれる“ひざに水がたまる”ことについての説明と対処法を紹介させていただきます。
このことを知っていただくと、日常生活をおくる上では欠かせない大切なひざにとって一番良い選択をとることができます。
「ひざの水抜いたら癖になるっていうけど、大丈夫なの?」という質問に対して、
“ひざの水は抜かないほうが良い”
ということが答えとなります。なぜひざの水を抜かないほうが良いのかを説明していきます。
【ひざの中の水とは?】
ひざの関節は、下の図のように「関節包(かんせつほう)」という袋に包まれています。
その関節包の中には、ぬるっとした粘り気のある液体が入っています。この液体を、「滑液(かつえき)」といいます。
“ひざの水”とよくいわれるのは、関節包の中にはいっている滑液のことなのです。
【ひざの水の役割】
“ひざの水”といわれる滑液は、関節包の内側にある「滑膜(かつまく)」というひだから分泌されます。滑膜は新しい滑液を分泌するだけでなく、古くなった滑液を吸収する役割もあります。
ひざの関節内は血管が少ないため、ひざの関節の「軟骨」や「半月板」は、血液から栄養をもらうことができません。ですから、滑膜から分泌される滑液から、ひざの関節の軟骨や半月板は組織の修復や維持のための栄養をもらいます。さらに関節を動かしやすいように滑液は油のような役割をします。
※ひざの関節と関節が合わさった部分は、「軟骨」で覆われています。軟骨は、歩く・走る・ジャンプの着地時などひざに圧力がかかるときに、関節の表面を保護してくれるスポンジやゴムみたいなものです。
※ひざの関節の下の部分に「半月板」とよばれる軟骨組織があります。この半月板もひざの関節にとってクッションの役割をしてくれます。
【ひざに水がたまるメカニズム】
日常生活を送る中で、ひざはかなり使っています。例えば、意識はないかもしれませんが、人間は歩くだけでも一日何千回も膝を曲げ伸ばししています。こうした日常生活で、ひざとひざとの関節面をすり合わせることで、少しずつ摩耗して関節の表面は削れてけばだってきます。そのほかに、
▶加齢による関節軟骨、半月板の劣化
▶関節リュウマチ、痛風などの関節の病気
▶スポーツ、仕事、交通事故などのケガ
といった要因によりひざの関節面は痛んでいきます。ひざの軟骨や半月板がこれらの要因ですり合わされ削られることで、その“かけら”が関節包内に発生し散らばります。
関節包内にちらばった“かけら”が、関節包の内側にある滑膜にあたったり刺さったりして刺激します。この刺激がひざの中に炎症を引き起こします。
ひざにとっては異物であり、刺激の元となる“かけら”を取り除くために、リンパ球や白血球をふくむ滑液を大量に滑膜が分泌します。どれぐらい分泌するかというと、普段は1~2mlで丁度良いひざの中の水(滑液)が、ひざの中で炎症が起こることで約30~100倍にあたる30~100mlもの水(滑液)を分泌する場合があります。
このように、滑膜がひざの炎症により水が大量に分泌することで、滑膜のもう一つの役割である水の吸収が間に合わなくなり、ひざに水が溜まってしまいます。
つまりひざに水がたまるのは、ひざに炎症が起こることで、ひざの水の給水と排水バランスが崩れてしまうためです。
【ひざに水がたまるとなぜ痛みがでるのか?】
炎症とは、身体の組織に異常があると、それを他の組織に知らせ治そうとする反応です。また、炎症が起こると、身体の損傷している部分が「熱感(熱くなる)」「疼痛(痛みがでる)」「腫脹(はれる)」「発赤(赤くなる)」という反応がでます。
炎症によりひざに水がたまったときも、ひざは赤くはれて、触ると熱く、痛みをだします。この反応の役割は、
「発赤(赤くなる)」
⇒血管を広げて、血液から治すための物質をもらう
「熱感(熱くなる)」
⇒修復してくれる細胞の活性化
「腫脹(はれる)」
⇒血管を広げて、血液から治すための物質交換をうながす
「疼痛(痛みがでる)」
⇒痛みをだすことによって、治りを早くするために身体の動きを制限させる
つまり、ひざの骨に痛みがあるのではなく、滑膜の炎症反応が、ひざに痛みをもたらします。
【なぜひざの水を抜かないほうがよいのか】
炎症とは身体におこった
“火事”
なのです。通常、火事が起これば水をかけますよね。ひざに炎症を起こした場合も、炎症による火事を消そうとひざの中に水を大量に分泌されます。
ということは、ひざの中が損傷状態で治っておらず、炎症という火事が起こっているにもかかわらず、ひざの水を抜いてもまた火事を消そうとひざは水をだします。一時的に抜いても、すぐひざに水が溜まってしまうのです。
怖いのが、何回も繰り返してひざの水を抜いていると、炎症を起こしていてもひざが自分で水を出さなくなります。そうすると、ひざの自己修復能力がおちて、やがてひざの骨の変形につながる恐れがあります。
将来のひざのためにも安易に水を抜く選択は避けられた方がよいのです。
【ひざに水がたまったときの対処法】
ひざに水がたまり炎症が起こっている場合は、アイシングが有効です。方法として、
「ひざ全体を氷水で冷やす」
「1回につき20分~30分冷やす」
「一日2~3回冷やす」
です。炎症反応は身体を治すためには必要な反応ですが、過剰に出ると健康な細胞まで痛めてしまいます。炎症の温度を下げることで、過剰な反応による細胞の損傷を防ぐことができます。
注意事項としては、痛い部分だけ冷やしても炎症はひきにくいのでご注意ください。アイスパックでもよいのですが、アイシング中に凍傷を引き起こしてしまう可能性があります。アイシングは水を通すほうがより冷やす効果が高いという報告がされています。また、水を通して冷やすほうが凍傷にもなりにくいともいわれています。氷のうがなければビニール袋に氷と水を入れて冷やしてください。
※シップは冷やす効果は見込めません
よく「湿布でもいいですか?」という質問を受けます。しかし冷湿布を缶ジュースに貼っても、缶ジュースは冷えませんよね。湿布自体には冷やす効果はないのです。消炎鎮痛剤も皮膚を通してはそれほどしみこみませんので、氷水で冷やしてみて自己治癒力で身体をなおしていってください。
【まとめ】
炎症がなくなれば、ひざからでる水の量も減り、過剰なものは吸収され、自然とひいていきます。ですから、まずひざの水を抜くより、ひざの炎症をひかせる治療をしていきましょう。
それでもひざの水がなかなかひかないようでしたら、『接骨鍼灸院じんぎゅう』にご相談ください。ひざが早く通常の状態に戻るようお手伝いさせていただきます。
柔道整復師・鍼灸師 久木崇広 監修
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